俺の言うことは正しい。三国志祭(2)
会社員である俺には、守らねばならない、掟がある。現代用語では、コンプライアンスと呼ぶ。
2015年10月12日(祝)に、神戸新長田にて、日本唯一にして日本最大級の、三国志オンリーイベントが開催されることは、最前より知っており、重々わかっており、俺は嘆き悲しんでおった。
なぜなら、俺の仕事は、土日祝日が重要であり、祭日に仕事を休むことなど、けして許されないのだ。したがって、もう何年も、コミケにも、イベントにも、お祭りにも、コンサートにも行かれない生活を、忍従している。
ああ、横山光輝三国志に、せっかくはまったのに、三国志祭りの日は仕事だもの、行かれないなあ…
そんな気持ちを、俺はツイッターで、ぐちぐちしゃべっておった。
駄菓子菓子!
直前になって、奇跡が起こり、俺の会社の人事部が、謎の有給消化を俺に命じ、俺は祝日にもかかわらず、10月12日に、ミラクルな旅行にランデヴーすることが出来て、ハッピクラッピーであり、人事部ありがとう。
…と、いうのは、真っ赤なウソである。
実は、計画的に休みをとった。真っ赤なウソをついて休んだ。架空の親戚を殺して休んだ。
そう、俺は、無辜のツイッター民には「お祭り行きたいけど、お仕事休めないから、行けない。ぐすん。」とウソをつき、当日前夜になって初めて、「明日、神戸のお祭りに行けることになったよー!急に、お休みもらえたんだ。」と明かした。これもウソだ。俺の会社は、有給消化など、くれてはいない。
つまり俺は、会社にウソをつき、ツイッター民にも、ウソをついた。ウソつきは何のはじまりであろうか。
「俺の言うことは正しい。俺のなすことも正しい。俺が天下に背こうとも、天下の人間が俺に背くことは許さん。」(曹操孟徳)
そんなわけで、10月12日の午前10時、神戸新長田の鉄人28号前に到着した。
鉄人前の広場では、子供さんたちによる中国武術大会がはじまっており、自分の子供が出るから、親御さんたちが夢中でシャッターを切って、などと、子供の大会だと、なめていた俺は、度肝をぬかされた。レベル高すぎ。本格的な剣舞であり、本格的な殺陣である。少年少女たちが舞い踊る武術大会は、俺のような観光客をも魅了し、周囲は黒山の人だかりだ。
商店街の方は、さすがにまだ時間が早く、人もまばらだが、コスプレ参加のお友達が散見された。俺は一路、目的地に向かった。KOBE三国志ガーデンで、11時半からはじまる催し物に、いちばん行きたかったのである。
横山光輝マンガ三国志の、LINEスタンプ制作者、原寅彦さんのトークショーである。
制作期間2年以上、「三国志」LINEスタンプにかけた“原作厨”の情熱 “狂気の企画書”420ページ 「あのコマ」入らなかった理由は……
「三国志」のLINEスタンプ第2弾が登場! 今度は「ちょいウザ!」で女子ウケを狙う
会場の写真はない。無断で撮影などしては、失礼だと思ったからだ。アーケードの中にある、KOBE三国志ガーデンのお2階、屋内のステージで、トークショーがもうすぐはじまる。刻限より早く、俺は会場に入り、なるべくいい席に座ろうとしたが、既にお客さんでいっぱい。ステージには、司会のかたと原寅彦さんが、おふたり並んでお座りになり、ショーは、まだはじまっていないのに、既にしゃべりまくっておられる。
司「ラインスタンプ三国志でおなじみ、原寅彦(はらとらひこ)せんせいの、夢のトークショーは、まもなくはじまります。お席、どうぞ前の方につめておかけ下さい。開始まで、しばらくお待ち下さい。」
原「外でやってる演し物が終わったら、こっち、はじめていいみたいですね。」
屋外では、ゆるキャラ、孔明わんと関うーたんの歌と踊りをやっているのである。こちらは、対象年齢、幼稚園児ぐらいである。♪孔明わわーん 関羽ぅーたたーん さんさんさんさん さんごくしー♪と歌っていたが、幼稚園児に、元ネタがわかるのだろうか。だが、そんなことはいい。孔明わんは、かわいい。園児向けだとなめていた俺は、孔明わんと、関うーたんのかわいさにも、すっかり魅了されてしまい、記念撮影までしてもらった。
司「ハイ、待てあわてるな、これは孔明の罠だ、の作者、原寅彦せんせいの、ゴールデンミラクルライブ、まもなくです。ショーの後には、質疑応答のお時間も、もうけてございます。LINEスタンプに、わたしの好きなあのコマが入らなかったのは、どうしてか?などなど、皆さん、忌憚のないご意見を下さいねー。」
原「ちょっとちょっと。ハードル上げないで下さいよ!」
こんな具合で、司会者さんと原さんの、かけあい漫才になっており、場内どっかんどっかん、爆笑の渦である。さあトークショーが、はじまった。サーフェスのパワポが、スクリーンに映しだされ、しれっとした諸葛亮孔明の「お気づきになりましたか」。
俺が嬉しかったのは、会場にいる皆さんが、横山光輝三国志の、コアなファンばかりであることだった。中には、会社にウソをついて重要な仕事を休んで、遠くの県から新幹線で駆けつけたような、頭のおかしいファンもいたわけだ。そんな濃いお友達同士だから通じる横三ネタ。原寅彦さんの愉快トーク。横山光輝三国志、おなじみのコマたち。抜粋され、セレクトされ、順番づけられたパワーポイントでくりだされる、南蛮のパオオ(←象の鳴き声です)。
トークショーの後、原寅彦さんの著書を買い求め、本に、サインをしていただいた。
原「お名前は?」
俺「ガラマニ(本名)です。」
原「ガラマニさんの、好きな武将は?」
俺「曹操です!!」
原「じゃっ、曹操の名言を書きましょう。」
『2015.10.12.ガラマニさん江
(サイン)
“おれのいうことは正しい” 』
- 作者: 原寅彦,横山光輝
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三国志祭りのクライマックス、桃園三兄弟の巨大人形パレードは、次の記事で。