新ガラマニ日誌

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小田原・鎌倉旅行記(4)美しいものをみるための観光

【見た順】

鎌倉国宝館→神奈川県立近代美術館・鎌倉館→近代美術館・鎌倉別館→川喜多映画記念館→鎌倉文学館鏑木清方美術館

日にちをバラす。俺が行ったのは、7月15日(火)、朝9時30分だ。まさにこの日、この時刻に、グランドオープンしたのが、鎌倉国宝館の、「鎌倉の仏像」常設展だったのだ!

鎌倉市/鎌倉国宝館ホームページ

一番のりじゃー!一番手柄じゃー!

なにしろ、9時30分になるまで、国宝館の前で、ウロウロ、まだかーまだかー、早く見せろー、見せろー、ガウガウって一人で騒いでいたのだ。時刻になりました、開門です。ワァーイ!いざ、仏像!

鎌倉時代は、仏教芸術が、芳醇な発展を遂げた時期である。仏像の作風は、豪胆だ。なにしろ、「大きい」のが特長だ。彫塑(立体)にしろ、絵画(平面)にしろ、優れた美術作品は、大きい。大きいというのは、サイズがでかいという意味では、まったくない。例えば、縦5センチ横3センチの範囲におさまっていたとして、作品全体の構成が、大きいのがよい、という意味である。

これは、視覚芸術全般にいえることで、例えば、マンガでも、上手い作者のマンガは、大きいのである。コマの中に、せせこましく窮屈に描きこまれているマンガ絵は、小さい。反して、原稿用紙いっぱいに、のびのび描かれているマンガ絵は、大きい。後者が、優れたマンガ絵である。…そう言ってる、俺の撮る写真作品は「小さい」ので、もっと「大きい」写真が撮れるように、なりたいよ。

さて次はっ。な、なんだってー!!抽象画の企画展をやってるじゃないか!

さっすが、近代美術館がある県は、ちがう!格がッちがう!ミセロ。オレニソノ展覧会ヲ、ミセロー!ミセロー!

田淵安一 知られざる世界 神奈川県立近代美術館<鎌倉館>7月5日〜9月15日

オープン・ザ・ドアー!!ミーセーロ!

この美術館も、9時30分オープンで、俺がミセローミセローうなりながら入って行ったら、学芸員のおねいさん達が、受付所で数人かたまっていて、「おまえ、もう来たんか」みたいな顔をしていた。鑑賞中、客は俺一人だったので、ゆっくり見ることが出来た。田淵安一の絵も、「大きい」。色鉛筆の秀作から、油彩の完成品まで、田淵の生涯作品を、キッチリ展示してある、とても濃い企画展である。

その上、近代美術館、鎌倉別館まであり、ここの企画展は、なんと、ベン・シャーンジョルジュ・ルオーだってよ!ルオー、俺、大好きじゃん。なにこのレヴェルの高さ。鶴岡八幡宮の境内から、歩いてすぐ。この近さ。鎌倉、美術の天国やないかあー

ベン・シャーンとジョルジュ・ルオー 神奈川近代美術館<鎌倉別館>7月5日〜9月15日

戦禍にさいなまれる者、経済的弱者の咆哮を、鈍痛のような重たさで描いた、ルオーとベン・シャーン。なんという力強さだ!自由万歳と言いながら、俺は死にたい!

川喜多映画記念館を見て、まだお昼前だった。鎌倉駅から江ノ電に乗り、長谷駅下車。大仏様を見て、長谷寺を見て、生しらす丼を食べて、さあ、一番、楽しみにしていた、ココ。

鎌倉文学館だ!

おでれえた。ものすごく涼しいんです、ココだけ!炎天下の表通りから、北の森へ入ると、なんとここいら一帯が、文学館の私有地なんである。

…すみません、このトンネルみたいなものは、なにですか?なんちゅうか、金持ちの規模も、格がちがうな。

そうなんです。この鎌倉文学館は、前田利家さんの御子孫、前田侯爵さんの別荘だったのである。緑のトンネルを抜けると、その本館が、とうとう俺の前に現れた!

ザッツ・階級格差やなあ。このお屋敷の中に、太宰とかの、プロレタリアート文学の展示もしてあるんだから、すっごく、ミスマッチ。

広い庭園には、アンソニーが作ったみたいな、バラ園があって、ローズな香気が、たちのぼっている。

青い屋根の豪邸!侯爵家の別荘!この規模で、本宅ではないっちゅう!中にある展示品は、階級格差を憎み、貧困を嘆いている作家たち!よーわからん雰囲気ぞなもし!

鎌倉文学館で開催していた企画展は、みんな大好き、『わたしのワンピース』の、西巻茅子(にしまきかやこ)さんの絵本展だ。俺は、西巻氏の著作では、『えのすきなねこさん』が一番好きである。

えのすきなねこさん (絵本・こどものひろば)

えのすきなねこさん (絵本・こどものひろば)

絵描きは、実学者や、商売人には、理解されない。なぜ、絵なんか描くのか、周囲からの無理解に悩み、自分自身でも、なぜ、なんのために、絵を描くのか、わからなくなる、主人公ねこさん。だがやがて、知る日が来る。創作すること、それ自体が歓びであると、知る日が来る。この作品で、西巻氏は、ねこさんの描く絵を、ミロ風にしたと、美術雑誌「デザインの現場」で語っていた。俺はその記事を、高校生の時、読んだのだ。

いい展覧会を見た。芸術っていいなあ。素敵な所だ。芝生に腰をおろし、脚を伸ばした。


鎌倉で最期に見たのが、美人画の、鏑木清方(かぶらぎきよかた)記念美術館。

清方の挿絵ができがるまで、という企画展を開催中。7月4日〜8月26日

美しいものを、見たい。そう思って旅に出る。鎌倉の最後に、清方の美人画の原画が見られたのは、幸運だった。美人画を描くことは、非常に困難な仕事だと、今さらながら、鞭打たれた。

美しいものを見るための観光。鎌倉は、俺の希求するものを、たくさん見せてくれた。