新ガラマニ日誌

ガラリアさん好き好き病のサイトぬし、ガラマニです。

ガラマニ日誌〔14〕04/1/31(土)「名神 高速子さん」その2

【前回のあらすじ
ガラマニと、名神 高速子さん(めいしん こうそくこさん。仮名)とは、小学校からの親友。
長年、高速子さんに、世話になりっぱなしだったガラマニは、1990年代後半頃、突然の、高速子さんからの電話SOSに、すっくと立ち上がったのだった。ちなみに、名神 高速子さんの、ネーミング由来は、彼女が、名古屋~阪神間を、常時、高速移動しているからである】

 

電話越しに、泣きじゃくる、高速子さんから、詳しい、いきさつを、聞いた。

高速子さんは、彼氏…こいつの仮名、なんにしようかな。
よし決めた、永久 凍土(えいきゅう とうど)に決定。埋めたいから。

永久氏と、俺は、何度も会っていた。なにしろ、高速子さんは、実家のお父さんに、永久氏を紹介する際、俺を同行させたぐらいである。

名神家とガラマニ家は、近所であり、両親同士も、仲良しである。俺も、高速子さんも、お互いの家の、間取りまで熟知している。勝手しったる、名神家の茶の間で、俺は、永久氏と並び座り、お父さんとの、ご対面に立ち会った。

今になって、思えば、だが。
嫁にもらう女性の、実家を訪問し、お父さんに拝謁するとなれば、普通、緊張したり、腰が低くなるものでは、ないだろうか。ところが、永久の野郎は(怒)、さほどオドオドもせず、
「娘を、どうか宜しくお願いします」と頭を下げる、お父さんに対して、おじぎすら、マトモにしなかった事を、たった今、想起し、もっと、血祭りにあげればよかったと、ハラワタが煮えくりかえっているガラマニである。

むしろ、お父さんの方が、俺に対して
「ガラマニさん、どうやね、高速子の彼氏は…ええやろうか」と、おうかがいされたぐらいである。

また、高速子さんは、永久氏の関西の実家には、もっと頻繁に行っていた。
双方の、ご両親の了解の下に、同棲しており、入籍は、永久 凍土氏が院生だったことから、彼が就職し、生活が安定したらね、という約束であった。永久の野郎が、院進勉強をする間、高速子さんは、自分も修士号を取得しながら、家事をし、なおかつ、修論後は、お勤めをして、生活費を稼いでいた。

彼に料理を作り、彼が散らかした部屋の掃除をし、彼の背広の繕い物をし、そして自分の勉強と仕事をしていた。家事と、家計のやりくり一切は、高速子さんがしていた。彼女が、自分の給料で買った、マニキュアをつけて、彼に見せたら、
「なんだ、そんな色。無駄遣いするな」と言われた事があったと、つい最近、高速子さんから聞き、もっと血祭りにあげればよかったと(以下同文

それでだ。永久氏は、今年度、めでたく就職しました、と。
では、結婚式はいつにしましょうかと。就職1年後の、来年の春頃はどうかと。そう言っていた、次の年が明けた、2月頃だっただろうか。永久 凍土は、長年、女房扱いしてきた高速子さんに、

「職場で、知り合った女の子が、好きになった。だからお前との結婚はなしにする。別れるね」

と言ったと。

…この男を、責めては、いけないと、もしも誰かが、俺に命じたならば。

俺は即答しよう。天が、法律が許しても、いやさ高速子さんが許しても、俺が許さないとな。

なぁにが、「好きになった」だ。「もう付き合ってる。今までウソついてた」だろうがよこの、カスが!

電話越しに、俺は高速子さんに、奴は、今どこだ、と尋ねた。
(注:高速子さんは、同棲アパートの有線電話から、かけてきていた)
奴は、2人のアパートには帰宅せず、会社から、関西圏の実家に、直行したという。逃げたか。

俺「実家に、電話したの?!そんな事、ハイそうですかで、済むわけないやんか、
 あっちの親に、凍土さんいますかって、電話で聞いたらいいやん」
高「それが…あっちのお母さんが出て…」
俺「電話に?そんで、なにってゆったの?あっちのお母さんは」
高「うっ、うっ、ひ、引越し屋が、アパートに行くから、凍土の荷物を引き渡してくれって、言われて…」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・天が、法律が許しても(以下同文


男女の事は、当事者にしか、わからない事がある。
高速子さんと、永久氏との間にも、長年蓄積された、「別れる要素」があったのであろう。彼女が、語るところによると、高速子さんは、永久家の姑さんには、好かれていなかったらしい。

だがしかし。きゃつめ!永久 凍土め。
高速子さん本人と、なんら話し合いせず、実家に逃亡し、電話口にも立たず、おかーさんに、引越し屋が行きますと言わせる、などという事が、許される

と思ったら大間違いだ!!


ところが、前回書いたように、俺は、プチ病床にあり、収入も、なかったので、関西まで高速移動できなかった。これが、今でも、悔やまれる。また、こういう件になると、高速子さんのお父さんが、文句を言える世の中では、あまりない。自由恋愛の名の下に、永久 凍土のような、鬼畜行為が、まかり通ってしまう。

ポイントは、結婚が口約束で、書面を作っていなかった点であった。
私的文書であっても、結婚を約束しますと、署名・捺印しておれば…「仲良しのカップル」は、そんな事は、しないから…だから、永久 凍土の野郎は、黙って逃げれば済むと考えたのだ。

高速子さんは、電話で、しゃくりあげながら、俺に訴えた。

高「彼が、別れたいと言うんやったら、悲しいけど、仕方がないねん、でもさ、 ちゃんと、わたしと話し、してほしい、のに、電話にも出ーへんし、 相手の…職場の女の子が、どんな子かとか…その子と結婚するのか…とにかく、話し合いたいねん…うっうっ…何年も一緒に暮らしてきたのに、なんの説明もあらへんで、ほんやで、うっ、うっ」

俺「し、仕方がないって…高速子さん、そんなの、許したらあかんて!怒鳴りつけたりゃー!」

高「でも、好きやねん。怒れーへんねん電話も通じーへん」←興奮のためか、ガラマニ地方弁と関西弁が混ざってる

実家に立て篭もり、電話に出ない永久と、高速子さんは、話し合えず、彼女は、引越し屋さんに、荷物を持って行かれたそうだ。

その直後、永久は、なんと、会社の女を連れて、東京に引っ越したのだ。
永久の勤める会社の、東京本社へ転勤、つまり栄転。社内でゲットした新しい彼女は、自主退職し、永久の新しい「女房」の地位に就いたというわけだ。つい先日、高速子さんが引越し屋さんに渡した荷物を、永久は、新しい「女房」にほどかせたわけだ。

つまり、計画的である。永久 凍土は、就職した会社で、新しい彼女ができた。それを1年近く、同棲している高速子さんに隠蔽し、高速子さんに、家事をさせながら、夜もしながら、二股をかけていたわけだ。翌年度に、転勤が決まるやいなや、これ幸いに「古女房」高速子さんを捨て、東京へ逃亡したのだ。転勤も永久自身の希望であったらしい。

俺が、高速子さんからの、初めての「泣きながらの電話」を受けてから、つまり、奴が「別れるね」と言った日から、東京逃亡まで、わずか1ヶ月ほどであった!

しかーも。永久 凍土は、東京の住所・電話番号を、高速子さんに知らせないように、実家のおかーさんに言いつけて逃げた。逃げた。
おかーさんは、高速子さんが電話しても、しらっとして取り合わなかったそうだ。


名神 高速子さんは、うなだれて、ガラマニのいる、故郷に帰ってきた。
彼女の勤める会社の、正規の休日に、である。俺と、高速子さんは、喫茶店で話した。

高「あれから、永久と、全然連絡が取れーへんねん。行方がわからへんねやんかぁ」←混ざってる

満20歳から、20代後半まで、連れ添った彼女と、話し合いなく、逃げてからまだ1ヶ月である。彼女の気持ちが、おさまるわけがないし、筋も通らない。否、このままでは、俺が許さないからな。あの、知的で、いつも凛としていた、高速子さんを、こんなに、やつれはてさせやがって!

俺「東京都内って事は、わかっとるんやろ」
高「うん、会社名は知っとるし、その本社やで、家もその近くやろーと思うけど…」
俺「じゃあ、行こまい。高速子さん」

茶店の椅子から、立ち上がる俺。

高「行くって?どこにぃ…」

俺「県立図書館やて!」

俺の車の、助手席に乗り込む、高速子さん。高速子さんは、車を持たないので、故郷で会う時の移動は、もっぱら、俺の運転である。

高「図書館で、どうすんねん」
俺「あそこにはね…全国のハローページ、タウンページがあるんやって。それで調べるんや!タウンページで住所検索、次は、ゼンリン住宅地図で位置確認やっ!さぁ、行くにぃ、県立図書館2階の電話帳コーナー!棚一面ハローページタウンページじゃ、青青黄黄ー、あおきいきいコーナーやてぃい。ガン首洗って待っとれ、永久!なあ、高速子さん」

すると、高速子さんは、泣きはらした目を、なおもゆがめさせ、しゃくりあげた。

高「…が、ガラマニさん、なんで、なんで、そんなに…」

ハンドルを握りながら、俺は、黙ってうなずいた。
なんでそんなに、わたしのために、一生懸命にしてくれるのかと、貴女は問うのだね、なにを言うか、高速子さん、俺が苦しい時、いつも助けてくれた貴女を、県立図書館へ連れて行く事ぐらい、させておくれ、なあ、高速子さん、俺の友達よ、と思っていたら、彼女は、潤んだ瞳で、こう言った。

高「ガラマニさん、なんで、そんなに、行方不明人捜索に、詳しいねん」

俺「…いや、捜索に、詳しーんやなくって、ほれ、図書館には、よー行っとるで、あそこにあったなあと…」

青青黄黄ー、あおきいきいコーナーに到着、俺と高速子さんは、手分けして電話帳を検索、会社の所在地など、すぐ判明。ゼンリン住宅地図でも、すぐ判明。メモをとり、2人は策謀を練った。

俺「考えるまでもないにー。この本社に電話して、永久 凍土を呼び出せばええんやに」
高「…うん…どうしても、このままやったら…ぐすん、話したいんや…彼と…」


さて、その後、高速子さんは、会社があるので関西に帰り、かつて永久 凍土と2人暮らししていた、アパートから、また俺に電話をかけてきた。図書館後、数日である。連絡とれたのだろうか。

高「ガラマニさん、永久が、わたしとは話したくないって…うっ、うっ、電話で、永久が出ると、わたしやとわかったとたん、切ってまうんや…ぐすん、うう、ほんで、仲介役の、友達と、ガラマニさんとが、話し合ってくれって、その友達から言ってきたんや」

なにもかも狂っとんな、永久 凍土。男女の事であろう、本人同士が話すべき事であろう。なにが、仲介の「ともだち」同士が話せだと?ハァ?ここでまた、ブチ切れですよ。

さて、そして、俺と、永久側の、男の「ともだち」とが、電話でバトルとなった。こいつと、なにを話したか、細かく記憶がないが、コテンパンにたたきのめし、

俺「あたしとあなたが、なにを話す事があるんですかッ!
 高速子さんと、永久さんが、会って話すべきでしょう!
 こんな形でなく、もっと早くにね!なんですか、あなた、
 女性の20代を尽くさせて、喋りもせずに逃げるような男の片棒かつぐんですか、
 あなた、どういう神経ですか、聞くところによると、
 永久さんと同じ大学、同じ会社で、あなたも永久さんも、科学者だとか?
 え?科学者というのは、2割る2は全部1ですか、
 別れるね、イコール、別れられるですか、人間の心は計算外ですか、
 それでなんですか、国際的科学者ですか、
 立派なカガクの方は、人間を計算で割るんですか、
 ああーーーーーーっ?永久さんを出しなさい本人をぉ!」

とかなんとか、怒鳴りつけて、とにかく、ガラマニVS永久 凍土 の電話にまで、こぎつけた。

俺「もしもし、永久 凍土さん…」←優しい口調
永「…あ、ハイ、永久です…」
俺「お久しぶりですね、あたしの京都のお部屋に、高速子さんといらした事もありましたわねホホホ」
永「ええ…でしたっけ、ね…」
俺「で?なんで高速子さんと、話し合い、しないんですか?」←突然、コワイ口調

かなり、長い時間、俺と、永久氏は、電話で話したが、全くラチがあかなかった。
なにしろ、再三再四、俺が、高速子さんに、会えと言っても、きゃつは、会わない、電話もしないと、答えるだけなんである。こういう押し問答を、ガラマニと永久が、電話でしている事自体、おかしな事である。せめて、電話ですら、きゃつは、高速子さんとの話し合いを、すればいいものを、しないんであるから。

と、俺が、何度言っても、永久は、のらくらと、言い訳ばかりである。それどころか、新しい彼女と、高速子さんを比較して、今のカノジョの方がボクには天使なんですよ、みたいな事まで、俺に喋り出す永久。

 俺を、誰だと思っている?
 いや、友情をなんだと思っている?
 俺と、高速子さんは、おめえと仲介役のダチ公みたいな、馴れ合いじゃねえ。
 もしも、ガラマニが、ふった男への言い訳を、高速子さんにお願いしたとしたら、

高速子さんは、俺を叱るだろう。
「ガラマニさん、それは、あんたが彼に、言うべき事や」と!

高速子さんは、そういう人なのだ。先だって、俺が落ち込んでいた時期にも、彼女は、俺自身がすべき事と、友達がすべき事とを、教えてくれたのだ!

俺「何度、言えばわかるんですか?!高速子さんと、話して下さい。
 そういう事は、永久さんと、高速子さんとの、気持ちの問題でしょう。
 あたしは、彼女の気が済めば、いいと思ってますし、
 あなたには、男として、責任を持ってほしいと、思います。
 あなたが彼女に、話して下さい」

この電話バトルでの、永久 凍土が言った台詞で、五臓六腑がでんぐり返るほど、俺が怒ったのは、これへの、きゃつの返答である。とくと、お聞きあれ。


永「だって、ボク、けんかしたくないんですよ。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


…そらみみ、かな。


俺「…今、なんてゆいました?」

永「けんかしたくないんです。」

俺「けんか、したく、ないと、ゆった?」

永「ハイ。けんかは、したくないぢゃないですか。」

 


俺「あんたが、高速子さんに、けんか売ったんでしょうがッ!!」

永「・・・・・・」

俺「けんか売ったのは、あんたでしょう!売っといて逃げたんでしょう! けんか売って逃げて、なにが、ボクけんかしたくないんです、ですって…こ、この、


卑怯者!な、軟弱者!それでも男ですか!!」←セイラさん口調

 

そして。


名神 高速子さんと、永久 凍土は、ようやく、電話で、話したそうである。
そして、永久 凍土は、永久に、彼女のもとから、去った。

 

あれから、何年も経った。

 

高速子さんは、元気だ。

 

去年、小学校の同窓会があった。集合したメンバーのうち、あの、運動会対決の時、紅白の団長だった、俺と、高速子さんだけが、今も、独身でいる。

高速子さんは、とてもきれいだ。
飯島 愛ちゃんを、知的にした感じだ、と俺が言うと、高速子さんは、イヤがる。

昨夜、俺の携帯に、今でも関西に住み、関西の会社に勤めている、
名神 高速子さんから、メールが来た。

ネットをせず、自称携帯メール大魔王の、高速子さんは、
俺には、たまーにしか、メールしない。

 差出人:名神 高速子さん

 件名:なし

 本文:今、電話していい?

~「名神 高速子さん」終わり~