Yの悲劇 エラリー・クイーン著 田村隆一訳
出た。悲劇四部作のなかで、特に日本人に、もっとも人気がある作品だ。その名も高き、『Yの悲劇』だ。
前回、『Xの悲劇』の記事で俺は、推理小説のおすすめ文を書くさい、これから読む人むけに、ぜったいやったらあかんことは、ネタバレだと、しつこく主張した。
では、ネタバレとは、どこまでがネタバレなのか?どこまでやってOKで、どっからがNGなのか?と、自問自答してみた。
『Yの悲劇』のような、不世出の、世界一の、超絶ウルトラ最高傑作を、一人でも多くの人に、読んでほしいと願う俺が、じゃあ自分自身が、この本読む前に、ネット上で調べていて、どんな記事を読みたくて、どんな記事を読みたくなかったかを思い出してみる。
結論:あらすじのサワリを書いた文章ですら、読むのはイヤだった。
前作『Xの悲劇』からひき続き、主人公で、探偵役をつとめるのが、耳の聞こえない老優、ドルリー・レーンさんですとか、サム警部とブルーノ検事も、レギュラーキャラで活躍しますとか、まあ、それぐらいなら、前作を読んだ人には、ゆってもイイと思う。
しかし、そのほかは、もうなにもいらない!今回の事件の舞台はどんなだとか、事件の関係者がどんなだとか、そんな先情報は、皆無の状態で、読み始めたほうが、ずっとずっといい!
だから、とにかく、とにかく、とにかく…推理小説という、「文章をじゅんぐりに読んでいく行為」そのものに意義のある文学については、あらすじですら、先に読む必要はないと感じた。知りたくないんだもの。どんな新キャラが、このあと登場するのか、ワクワクして待ちたいのだもの。
俺の書く、余計な講釈なんぞ、『Yの悲劇』を、これから読む人には、不必要だ!
「ヴァニラ!ヴァニラ!ヴァニラ!」のくだりはゾォーッとするとか、卵酒とかいう、へんなアメリカンな飲み物が出てくるので、その飲み物の味をリアルに想像すると、リアルに吐くとか、梨がきらいって、どんだけ偏食でワガママなんだこの罰あたりアメリカ女めとか、そういった、内容の核心部分に触れる記述は、即、ネタバレを禁止する国際法に抵触するのだ!
とにかく読め!ぜんぶ読め!ぜんぶ、順番に読め!