新ガラマニ日誌

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バスカヴィル家の犬[シャーロック・ホームズ] コナン・ドイル著 鈴木幸夫訳(1981年新学社文庫刊)

バスカヴィル家の犬 (創元推理文庫 101-7)

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月間雑誌「ストランド・マガジン」での連載中、雑誌連載にいやけがさし、ホームズを抹殺したくなった作者によって、ホームズは、宿敵(←宿敵といいつつ、登場したのは「最後の事件」で、いきなりだった)モリアーティ教授と、格闘のすえ、ふたりともライヘンバッハの滝に墜落し、ワトソンはホームズの死を嘆き悲しみ、

オシマイっ。

という、唐突すぎる最終回をむかえた、ホームズシリーズ。こんな終わり方をして、読者が納得するはずがなく、作者コナン・ドイルのもとには、死ねコロス系の手紙が殺到し、雑誌の定期購読をしていた読者からは、解約の申し出が、約2万件あったそうだ。…そりゃあ、そうでしょうよ…この後、続編が書かれるって知ってて読んだ俺が、この最終回はむごい、ワトソンがかわいそうすぎるって、落涙したもの。

そんな最終回、「最後の事件」が発表されてから、実に8年も経過した、1901年。長編『バスカヴィル家の犬』が、

コナン・ドイル先生の、シャーロック・ホームズ小説が読めるのは、「ストランド・マガジン」だけ!

な、同誌に掲載された。ただし、ライヘンバッハでホームズが死んだのより、ずっと以前の、モリアーティなんかいない、平和だったころの(←平和?)、出来事という設定である。

ホームズシリーズに長編は、4冊しかない。その中でも、『バスカヴィル家の犬』は、完成度が高い。俺はホームズ長編では、これが、いっとう好きだ。愛読している翻訳は、記事表題にかかげた、新学社文庫版である。

青い本が、俺の『バスカヴィル家の犬』である。

中学生のときからずっと、青い表紙の、この本が好きだ。山口県の、いやダートムアの、奇岩や、そこなし沼のある風景描写が、恐怖感をビュウビュウあおる。

この本のなにが怖いって、なによりも、犬が怖い。クライマックスで、黒い巨大な犬が、ホームズとワトソンと、レストレード警部を襲うシーンの、怖いこと、怖いこと。大きな犬を怖がる恐怖症のことを、医学用語で、「バスカヴィル症候群」という、その語源となった本である。うそです。そんな病名ありません。信じないように。