ベトナム・カンボジア旅行記(8)オール・アンコール遺跡総進撃
カンボジア旅行も、大詰め。最後の日を迎えました。
ソカ・アンコール・リゾートはよすぎるホテル
贅沢すぎるというか、俺がただの貧乏性というか。広すぎ、きれいすぎ、快適すぎで。帰国したくないとダダをこねて、マジで泣いていました。
最後の夜、Wifi環境が異常にヨイので、スマホでデイリーモーション動画を再生し、小椋佳の「マルコ・ポーロの冒険」主題歌を、何度も何度も再生し、ワンワン泣いていました。
♪新しい街が しばらくのうちに 見慣れた街に変わる いたたまれぬ 僕
どこにあるのか 安らぎの場所 なぜ また 旅支度
ホテルの朝食も、これが最後だと思うと。ありがとう、ソカ・アンコール・リゾート。また来ます、きっと。
バンテアイ・サムレ
この旅行記では、すっかりおなじみとなった、アンコール遺跡の多くを作った王様、スールヤヴァルマン2世による、ヒンディー寺院。雄大さと、繊細さとを持ちあわせ、中でたたずんでいると、何十年でもここにいたくなる。
門ー。
中−。
さらに中−。なんかもー、百を語るより、ここに来いよって言いたい。カンボジアまじ天国。
超かわいい俺の服ー。黄色のTシャツも、ゾウさん模様のサルエルパンツも、オールドマーケットで買いました。
バンテアイ・スレイ
各遺跡の入り口は、だいたいどれも、こんなふうになっている。てくてく歩いて、入っていく。
さて、これから観覧する遺跡、バンテアイ・スレイは、アンコール遺跡群では年代が古い。成立は967年ごろ。真っ赤な砂岩に彫り込まれた彫塑は、奇跡と呼ばれる保存状態なのである。
細密な彫刻を見てほしい。昨日、作られたかのように、損傷がまったくない。しかし間違いなく、この彫刻は、西暦900年代に作られたのだ。
俺はつねづね、芸術は至高であると叫んでいる。バンテアイ・スレイの圧倒的な「美」を前にして、政治闘争など、愚かの極みである。対人関係の悩みなど、塵のようなものである。
東洋のモナリザ。美のために、生きたいと思った。自由こそ、自分にとって健全だと思った。
バンテアイ・スレイのお土産屋さん付近で出会った、黒猫。まだ子猫で、俺がシャッターを向けると、ゴロリ〜ンコしてくれました。
ニャック・ポアン
こちらは比較的新しい、12世紀後半、ジャヤバルマン7世によって建立された、なんと医療施設である。
観音様や、ヒンズーの神様の意匠が混交された、美しい光景だ。美しいのは、物質の属性ではなく、その精神である。
泉水を浴びたり、薬草をせんじたりして、病気を治そうとした。民人を助けようとした王様が、いらしったのだ。これが美でなくて、なんであろうか。
プレ・ループ
これまた古い。プレ・ループは、火葬場の意で、成立は961年ごろ。
階段を自力でのぼってゆく。てすりなんかない。素晴らしい。足腰が効くうちに、我が人生のうちに、行かなければならない場所だ、ここは。
上からの眺めは、絶景。そして繰り返すが、カンボジアは空気が澄んでいる。汚染されていないことがどれほどありがたいかを、痛感させられた。この次の日、名古屋空港に降り立ったら、空気が汚くて咳込んだ。
狛犬さんがおる。なんかもう、神様、仏様、ありがとう。俺、今まで、がんばって生きてきて、きょうここに来て、本当によかったです。
プリヤ・カーン
ツアー最後に歩んだ、遺跡。仏教色濃いめ。ジャヤバルマン7世作、12世紀後半。
数あるアンコール遺跡のなかで、プリヤ・カーンにしか、ないもの。それがこの、円柱だ。円い柱の、2階建て。
カンボジアには、内戦があった。戦後には貧困があった。小柄ですべすべの肌をした美しい人々は、ようやく手に入れた平和のなか、のびのびと暮らしていた。若いころに、ポルポト政権で親を殺された中年以上の男女は、戦争がなくなった生活を愛おしみ、子供たちは、木切れで作った飛行機を追いかけ、赤い土を蹴って走っていた。
年頃の青年たちは、真っ白なすねの美女を探して息づき、美女たちはビーズの首飾りをつけ、笑顔で振り向いた。
希望で私を蹴って起こせ
旅行記をしめくくるにあたり、声を大にして言いたい。
よく、海外旅行にいくと、考え方が変わると言われるが、本当だ。変わるべきなのだ!
旅行に出る前までに、俺がかかえていた、悩みや、いらだちや、あらゆる精神病は、すっかり治癒した。そしてとくに、「我慢」というものが、いかに愚かなものかを、思い知らされた。
生活において、俺は、我慢ばかりしていた。言いたいことを言わず、保身に努めた。行きたいところに行かず、ケガを恐れた。やりたいことをやらず、小銭を数えていた。
ベトナム社会主義国も立派な国だったが、内戦後のカンボジアは、人間の本生がどんなものであるかを、俺にわからせてくれた。自由。美しさ。精神の解放。
帰国後、解放された精神は、新たなる人生をあゆみ始めた。
♪明日はまた 希望で わたしを 蹴って起こせ (小椋佳)