エラリー・クイーンの国名シリーズ!ほとんどその国と関係ありません!
本当に、ココロの底から、関係がないんだ。ローマとかエジプトとか、さんざん外国っぽく、タイトルコールしておいて、舞台は、ギッチギチにアメリカ国内やし、主人公のエラリー・クイーン探偵は、ニューヨーク在住なんだから。
アメリカ人の推理小説家、エラリー・クイーンとは、藤子不二雄のように、男性二人の共同ペンネームである。いとこ同士なんだってさ、愉快な親戚だね。推理トリックを考えるのが、めっぽう好きな一人が原案を書き、もう一人は、文章がすっごく上手なので、その原案をもとに、小説化する。二人で読み合わせて修正し、完成させるというスタイルなのだそうだ。彼らは、読みやすくておもしろい、世界最高の推理小説を、たくさん書いた。
「エラリー・クイーン」とは、彼らの筆名であり、同時に、国名シリーズの主人公の探偵、エラリー・クイーン君のキャラクター名でもある。
作中のエラリー・クイーン君は、なまいきで、キザな青年で、職業は、ニートにしか見えないが、いちおう、推理小説家という肩書きになっている。
エラリーのお父さん、リチャード・クイーン氏が、ニューヨーク市警の警視なので、事件が起きると、息子のエラリーも同行し、捜査のお手伝いをするというパターンである。考える息子、エラリーと、実際におまわりさんとして仕事をするお父さん、クイーン警視。クイーン親子が二人で協力して、事件を解決する様子は、まさにこの本の作者が、男性二人であることを、想起させられる。
クイーンの国名シリーズで、俺が読破したのは、以下の6冊だ。(まだあと未読分が、4冊ある。)発表年代順に、列挙してみた。アマゾンへのリンクは、画像のないものが多いが、俺が読んだ翻訳者の書籍にリンクしてある。おすすめは、やはり、SONY Reader ストアでの購入である。いい塩梅に古い、名翻訳版が、簡単に安価に、手に入るのだ。
ローマ帽子の秘密 宇野利泰訳
『ローマ劇場毒殺事件』と題された、石川年の翻訳版もあるが、前書きと、劇場内の見取り図がついている、ハヤカワミステリ文庫版の方が、お値打ちだったので、こっちにした。国名シリーズ第一段にして、筆名エラリー・クイーンさんのデビュー作品だ。
ローマのロの字も関係ない事件だが、ウーンウーン、えっと、劇場の名前が、ローマ劇場だったんだな。そんだけ。
国名シリーズは、だいたいどの本も、下記のような構成になっている。
事件勃発→警察が到着→クイーン父が呼ばれる→クイーン息子もついてくる→現場検証をする→かなり多い登場人物が検分される→クイーン親子は、早い段階で、真犯人の目星をつける→だが証拠がつかめない
→「読者への挑戦状」が挿入される。「ここまでの説明で、作者は、真犯人が誰なのか、わかる子にはわかるように、もう書いてあります。クイーン親子も、わかっています。さあ読者のキミたちには、わかるかな?」俺にはさっぱりわかりません
→ここからは、作品によってちがうが、だいたいにおいて、エラリーによる「この事件の解説」がおこなわれる→犯人が色々なことになって、オシマイ。
フランス白粉の秘密 宇野利泰訳
国名シリーズ第二段。先の『ローマ』に比べたら、フランス人も重要な登場人物だし、フランスっぽいアイテムが満載なので、国名シリーズがそれらしくなってきた。それと、本格推理小説は、フェアであることが求められるが、『ローマ』よりも、こちらのほうが、ずっとその意味ではフェアだし、内容が充実してきた。
ただし、人としてのエラリー君に対する、俺の評価は、だんだん落ちてきた。ハッハッハ。だって、なまいきで、強引で、鼻持ちならないキザなんだもん。
ギリシア棺謀殺事件 石川年訳
ギリシアのギの字も関係ない。ピンクレディーの歌にも歌われた、ペッパー警部ならぬ、ペッパー検事が登場。
今回のお話しは、俺のきらいなエラリー君が、探偵としてデビューしたての、まだ手柄をたててない頃なのだそうで、一回、推理発表会で、エラリーが失敗する。失敗して、すげー落ち込んでやがんの、こいつ。いい気味だ。
エラリーは弱々しく片手を振り、うなだれて、口ごもるような声で「失敗ですって?サンプスンさん。全く弁解のしようもありません。むちで打たれて、尻尾をまいて、家へ追い返されるべきですよ……」
そうだ、そうだ!帰れ、おまえなんか、帰れ!
「クイーン君。君の説明は二つの主要な条件を土台としておったな――」
「たくさんです、ノックスさん、たくさんです」と、エラリーはうめくように「どうか、もう、いじめないで下さい」
おまえが被疑者をいじめとるんじゃ!!
オランダ靴の秘密 二宮佳景訳
オランダのオの字も関係ないが、事件現場となった病院の名前が、オランダ記念病院なのだったっけか。国名シリーズって、読んでいると、推理に熱中してしまって、冠した国名がどうでもよくなる本なんだもんな。靴?オランダ靴?そんなものどこに出てきたっけ?みたいな。
エジプト十字架事件 石川年訳
エジプト十字架というものが、事件の重要な鍵、であるかのような書き出しだが、その実、エジプトのエの字も関係なかったです。国名シリーズのいつものことですね。
日本庭園殺人事件 石川年訳
これだけはちがう。日本、すごく、関係ある。主要キャラクターが、日本に住んでたことある。キヌメっていう名前の、日本人女中も登場する。
ところが、この本の原題は、「THE DOOR BETWEEN」といい、せっかく国名シリーズとして、今までのローマやギリシアとちがって、無茶苦茶、ニッポンと関係あるのに、作者はタイトルに国名を入れていないのだ。そこは日本の翻訳者が、気をきかせて、タイトルに日本国名を入れました。
書いてる作者、筆名エラリー・クイーン、アメリカ人は、至極まじめなのだろうが、翻訳した石川年たんは、あきらかにこれ、おもしろがってるだろうと思われるのが、下記引用部分である。
エヴァがカーレンの部屋をノックしようとしたとき、ドアが細目に開いて、キヌメの小さな姿があとずさりしながら出てきた。そのときは、キヌメは紙も封筒も持ってはいず、舌をかむようなことばで、なにかいっていた。
「オイ、ダマレ」カーレンが部屋のなかから気短そうにいうのが、エヴァに聞こえた。(日本語が変であるが、すべてそのままにしておく)
「ゴメンナサイ、オカーサン」キヌメは舌をもつらせながら大急ぎでいうと、寝室のドアをしめて、くるりと向きをかえた。
日本語が変であるがって…ぷぷぷっ!変な日本語がオカシイよりも、その放置プレイがおもしろいってばよ!石川年たん!