新ガラマニ日誌

ガラリアさん好き好き病のサイトぬし、ガラマニです。

アニメーターの質が落ちた

この記事は、書こうかどうか、躊躇したんですが…気になって仕方が無くて…

昨日、映画館に行き、映画「ブラック・ジャック ふたりの黒い医者」を見たんです。

公式サイト http://blackjack.jp/movie/

この記事にネタバレはありません。ただ一つのシーンを除いて。

非常に良く出来た映画です。ドクター・キリコは色っぽいし、お勧め出来る作品です。
ただ、どうしても、これを書かずにはいられない。一シーンを見て、びっくりしたんです。これはどういうことかと、我が目を疑うシーンがあったんです。

ピノコが、「ちぇんちぇいにカレースープ作るのよさ〜」と言いながら、お料理するシーンがありました。グツグツお鍋のスープを、おたまでかき回すピノコ。微笑ましい、女の子らしい場面です。

ピノコは、スープの味見をしました。

お鍋をかき回していた、おたまに、口をつけて、すすったんです。

・・・・・・・・・・・・・ぇえ?

この瞬間、ドン引きです、俺。もうびっくりです。

館内には、小中学生の男女がおおぜい、いました。彼らは、今、ピノコがした、とんでもないことが、分かっていたのでしょうか?

なにがって?分からなければ、おかしいですよ。

お料理の味見をする際に、かき回しているおたまに、口をつけてはいけない。一旦、小皿にとって、すするものです。俺は、幼稚園のとき、母親から習いました。母は、昔話しを例えに、俺に教えました。テレビの「ほんだし」のCMでも、割烹着を来た女性は、小皿にとってから味見をしていました。これが「常識」だと思っていました。

自分が舐めたおたまを、またお鍋に戻して、かき回すなんて、言語道断なのよさ。それこそアッチョンブリケだよ。唾液入りのスープを旦那様にお出しするつもりかい、ピノコ

つまり、アニメーターの…ここでは監督、プロデューサー、作画班ぜんぶを総称しています…製作者の、質が落ちたということです。最近のアニメーターは、ダンバイン湖川友謙先生や、坂本三郎先生に比して、腕が落ちたなと、俺は以前、記事に書きました。

その時は、画力のみを指して言いましたが、絵描きとは、物を知っていなければ描けないということを、ピノコのシーンを見て、しみじみ感じたのです。

ふたりの黒い医者」の作画監督は、杉野昭夫先生だというのに、なんとしたことか?

このシーン、或いはピノコというキャラが、「お行儀悪い」ものとして、描かれたシーンではありませんでした。おたまに口をつけるのが、自然な行動として描かれていたのに、俺はびっくりしたんです。このシーンの絵コンテ書いた人が、味見のお作法を知らなかったのかなぁ…

実際、自分も、ひとに出す料理の味見を、小皿にとらずにやってしまう事は、あります。しかし「これは本来、いけない事だ。お客様とかに見られたらたいへんだ」と自覚してます。血縁の家族であっっても、関係ないでしょう。自分の口つけたものを、みんなのお鍋に戻したらあかんのは。

(この作法が適用外になるのは、スキヤキなどの鍋物を、みんなでつつく時だと思われますが、それはそれ、これはこれです。あかんもんはあかんのよ。)

名作アニメシリーズ「愛少女ポリアンナ物語」(1986年)を見た時も、同じ様な事がありました。

ディナーのテーブルを囲み歓談するシーンで、ポリアンナはじめ、正装の叔母様ポリーも、右手でフォークだけ持ち、左手をひざに置いているんです。言うまでもありませんが(言うまでもないと信じたい)両手とも、テーブルの上に置いて食事するのが「マナー」です。ここで「マナー」という言葉を使う事すら、違和感があります。西洋も、日本も共通の「定型」と言うべきものです。

なぜ、こういう絵を描いて通用するのか、不思議でなりません。
百歩譲って、現代日本人は両手を食卓に置くお行儀は、もう失ったから、ポリナンナのアニメでは、視聴者に合わせた「お行儀の悪い」絵を描いたのだとしても。第一次世界大戦前の、アメリカの中流家庭で、こんな行いは、許されなかったのだという、時代考証が出来ていないのです。…いや、そんな問題じゃない…

愛少女ポリアンナ物語」の本放送だった1980年代後半から、アニメーターの質の低下が、加速した感があります。それは、画力の低下のみならず、良識の低下をも意味していたのではないかと感じています。暗澹(あんたん)たる思いです。

…味見するのに、おたまから、いちいち小皿にとるのが当然だと思ってる、俺の方がおかしい人だと、もしも言われるならば。俺は、おかしい人でいます。

【付記】
日本アニメ界の将来を憂えた俺が、新しい作品を見て、「これを描いたアニメーターはただもんじゃないな」と、嬉しい驚きを得たのは、「ムシキング」です。街頭のポスターで初めて見て、しばし魅了されました。このキャラクターデザイナーは、すごい腕です。ポスターを見ただけで、本編がどんなものか、描いたのはどなたなのかは、これから調べますが、ムシキングの人物画は、素晴らしいと思います。