新ガラマニ日誌

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恐怖の谷[シャーロック・ホームズ] コナン・ドイル著 阿部知二訳

恐怖の谷 (創元推理文庫 101-8)

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1914年の発表。ホームズシリーズに、4冊しかない長編の、4冊目だ。

長編4冊のうち、『バスカヴィル家の犬』(1901)を除く3冊、『緋色の研究』(1887)と、『四人の署名』(1890)と、この『恐怖の谷』は、2部構成になっていることで、有名だ。第1部は、おなじみ、ホームズとワトソンが活躍する、イギリスが舞台の探偵小説。後半の第2部は、アメリカ開拓移民のお話しになっているのである。1冊で、2度おいしいのだ。

とくに、2部構成もの3作品のなかでも、『恐怖の谷』は、第2部のアメリカ編が、ひじょうに怖くて、波乱に満ちていて、ビックリするよなトリックが仕掛けてある。アメリカ移民の、野蛮な集団内の、リンチの横行を描き、重苦しい。まさに恐怖の谷だ。

ところで、この本にも、例の宿敵、モリアーティ教授が、チョロッとだけ、名前だけ、背後にいたかもしんないぐらいの扱いで、登場する。いや、背後にいたんすけどね。

この本の、あおり文に、

シャーロック・ホームズ最後の長編は、彼の最大の敵、悪の天才モリアーティ教授との死闘である。

って、書いたあるからさ、期待して読んだけど、モリアーティはバックにいただけで、前面に出てきてホームズと戦ったりは、しないピョン。ホームズもモリアーティも不在な、第2部のアメリカ編のほうが、よっぽどドキドキしたよ。

後世に、「シャーロック・ホームズの最大の敵!」と名高い、ジェームズ・モリアーティ教授は、原作においては、いきなり最終回の短編「最後の事件」と、その後日談で、実はぼく生きてたピョーンと、ホームズがヌケヌケと生き返る短編「空家事件」、そしてこの長編『恐怖の谷』の、たった3作品にしか、登場しないのだ。そのなかでも、直接ホームズとあいまみえて戦ったのは、いきなり最終回の「最後の事件」のみで、いかにモリアーティが、連載を終わらせるためだけに、急ごしらえされたキャラかを、如実に物語っている。

先の記事でも言及したが、モリアーティをラスボスとして、重要キャラとして描いたのは、後世の映像作品のほうであって、原作小説では、かならずしも、モリアーティは、ラスボスっぽくない。なにせ登場回数が少ない。3回しっきゃないもの。「空家事件」では、モリアーティ死んだ後やし。