新ガラマニ日誌

ガラリアさん好き好き病のサイトぬし、ガラマニです。

コーネリアスライブレポート、club-Gの巻(2)

前回のお話し:club-Gの巻(1)へ

ガラマニ県ガラマニ市にあるライブハウス、club-G。それはそれは狭いライブ会場だ。立ち身客しかいない状況で、ガラマニもみんなも、我らがおやまーだの登場を待っていたわけだが、待ち時間がけっこう長かった。18時開場で、開演は19時である。立ち位置をゲットしたみんなは鮨詰めで、1時間、そこを動くことが出来ない。トイレにも、ドリンクを買いに行くことも出来ない。俺は、演奏中に尿意がクル事態を避けるため、開演前から飲み物を断っていた。ノドが乾くと、のどあめで誤魔化した。

「まだかな、まだかな」と、場内の期待が高まってゆき、おもむろに照明が落ちた。おお、いよいよ始まるか!

さて、このライブレポ、筆者の一身上の都合のため、前回の続きを書くまでに、随分と間があいてしまった。ライブの演出やネタバレについては、既に多くのファンが、詳細なレポートを発表している。俺も思いつくままに挙げてみる。

  • この舞台は、映像とバンド演奏とのコラボレーションが見事だとか、
  • その映像が、独創的で前衛的で引き込まれる、俺は特に渡り鳥のアニメが好きだとか、
  • バンドメンバーの衣装が、簡素な白い長袖ワイシャツで統一され、小山田圭吾さんはじめ、皆さん無表情だとか、
  • 細い鉄の棒がぶら下がった、鉄琴とトライアングルのあいのこみたいな楽器を、即興で「リーン チロリーン」と鳴らす様が、幻想的で眠けを誘うとか、
  • 小山田さんが「こんばんは。」と挨拶し、本日の日付を述べるさい、携帯電話を見ながらゆってるのがキャワユイとか、
  • 小山田さんが、突如、観客をひとり舞台にあげて、楽器を弾かせたのはたぶん仕込みだとか、仕込みでエエのやとか、

おもしろくって、キリがない。

俺は、小山田圭吾の芸術性について、感じたままを書く事にする。

コーネリアス(バンド名)、小山田圭吾(アーチスト名)は、「にほんじんのかしゅ」である。しかし小山田は、「にほんじんのかしゅ」らしさを自分に求めない。国内より海外をターゲットにしているからだ、とも言えるが、わざと海外向けの作風にしているのではない。たまたま彼は「にほんじんのかしゅ」らしくはなかったのだ。最初から。

彼の性質の根っこには、「硬派」がある。なおかつ彼の作品は、音楽界の「前衛」である。

日本の流行歌や演歌は、ファンの情念に訴えかけてばかりいる。恋愛の歌がほとんどだろう。好きだの、抱きたいだのという情念は、万人に伝わる。そして表現しやすい。

対して、コーネリアスの特長は、観客の情念に、いっさい訴えかけないことである。ただいっさんに、感性をゆさぶる。純粋に、音感だけで勝負する。歌詞は記号化され、意味を持たない。こんな音楽を作り出す者は、日本には、小山田圭吾しか存在しない。

人間にとり、情念に溺れることは容易く、感性を鋭敏にすることは難しい。前者の代表が恋愛である。こと、恋愛について「愛してた」「君は僕を残し去った」などとは、フリッパーズ時代から、小山田圭吾の作詞にはまったく出てこない。

さらに小山田は、「ボクがこんにちあるのも、皆さんのおかげです!」とか、ましてや「天国の父へ捧げます」などとは、けして言わないのだ。

感傷なんか、誰にも見せやしないのだ。「一青年」としての感情を、「コーネリアス」の客に押し付けないのだ。これを「硬派」と言わずして、なんであろうか。

小山田は「漢」だな、と俺は改めて思った。そして、ステージの彼と目が合いそうになるたびに、

ころさないでください(涙目)

になり、目線をそらした。俺は彼を神聖視しすぎていて、マトモに見つめることができぬ。いや単にコワイ。

舞台で彼は、終始、例によってウツロな表情で、淡々とギターを弾いていた。アップテンポな曲では、ロックスタァのように、かっくいいポーズをきめてもいたが、表情は相変わらずウツロなままだった。そして汗をかかない。舞台後半、髪の毛がほんの少し、彼の頬に張り付いてはいたが。顔色は白く、紅潮もしない。

やつは、一舞台につき一回だけ、演出でわざと「コワイ顔」をして、キッと観客をにらんだ。

ころさないでください(涙目)

俺は、小山田の同世代であり、彼がデビューした20歳からこっち、彼の音楽とともに歩んで来た。彼は、アルバムやステージを、気まぐれな遊び心で作り出し、ワレワレに与えてきてくれた。幸せだ。ワレワレも、小山田圭吾も、至極、幸せだ。

CORNELIUSは、世界の音楽シーンで、もっとも先鋭的で、もっともかっこよくて、そして、もっとも肩に力の入ってないアーチストである。やる気のなさ…本当はあるのだけど…見る者に、やる気を感じさせないこと。これこそが、ホンモノの天才の要件なのである。

Sensuous

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カエルのケーゴくん
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