「おにいさまへ…」ひかりTVビデオざんまいプランで連続アニメを全話一気見する
ここからが本当の地獄だ…
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_|_/;:;:;7ヽ-ヽ、 '') ""'''`` ‐'"='-'" / ! ! / だ. と か
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地獄の使者がとうとう俺の枕元に立った日
地獄 それは地獄
汝、地獄の釜のフチに立て
なにが見えるか
「出崎統監督が、また、池田理代子作品を、魔改造したようです…」
そうか ならば 落ちるがよい
「おにいさまへ…」全39話、一気見地獄に 落ちるがよい
「どうか、お許しください。池田理代子センセは、ベルばらのアニメ化のときに、出崎統の、例によって例のごとくの、魔改造に立腹して、
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アニメの最終回で、アランが農夫なんかになるはずがないと、
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そして、ベルばらの続編を描き始めたのでしょう。
『エロイカ』です。ナポレオンが主人公で、アランは生粋の軍人として、革命後の荒波を生き抜く、あのマンガを。」
栄光のナポレオン―エロイカ (1) (中公文庫―コミック版)
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ごたくをたれる刻限なぞ、もう、おまえには、ないぞ。
もう、遅い。おまえは、見始めてしまったのだ。
故・出崎統監督の、最晩年の最高傑作、「おにいさまへ…」を…!!
キャアアアアアアアアアアアアアアッ!!(←地獄へ突き落された、断末魔の俺の悲鳴)
俺はアニメファンなのに避けていた連続アニメ作品の全話見を
小見出しの通りなのである。避けていた。なぜって、こうなることが、地獄の業火に焼かれることが、わかりきっていたからである。
具体的に言えば、睡眠不足による、体調不良に陥ること。これが本当の地獄である。
…なに?なんかゆったか?睡眠不足ぐらいが、なにか弊害があるのかって?
あるわい!俺は自動車通勤族だ。働き盛りの中間管理職だ。睡眠不足は、過労の敵だ 運転の敵だ 風邪をひいたらたいへんだー
他人事だと思って、気楽にゆうない。俺はまったく、全39話一気見のせいで、楽しくて楽しくて、睡眠欲と食欲と、そして勤労意欲を失うという、娯楽地獄に、落ちたのだ!
…なんてステキな地獄…!!
マンガ「おにいさまへ…」(1974)は中編作品
俺が持っている、マンガ本「おにいさまへ…」は、これである。
分厚い本だ。「おにいさまへ…は、この本のぜんぶではなく、ちょうど半分までの、ページ数である。
この本は、1989年、中央公論社刊。これを初めて読んだときの俺は、「おにいさまへ…」の主人公、御苑生奈々子(みそのおななこ)さんより、数歳年上なだけの、大学生であったが、作品中の「時代」の、古めかしさに、うちのめされた。
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例えば、ソロリティ入会のための面接で、
「好きな作家は?」
と、先輩(注:女子高校生)に、尋ねられた、御苑生さんが、こう答える。
「たっ…立原道造と、ライナー・マリア・リルケです!」
すると、先輩がたは、
と言い、クスッと笑うんである!それを受けた御苑生さんは、
「いけない…!子どもっぽいって思われたのかしら」
と、こうなんである。………大学生でこのマンガ本を読んだ俺は、驚愕し叫んだ。
アニメ「おにいさまへ…」(1991)全39話
そして、である。このマンガがアニメ化されると聞いた1991年の俺は、原作マンガの古めかしさに驚いた直後だっただけに、
こんなもんアニメにしていいのか
と、率直に思った。内容が、あまりにも、1990年代の風俗と、かけ離れているからだ。はえぬきの女生徒だけが入会できるシステム、ソロリティが、リベラリストである薫の君によって批判され、ソロリティ反対運動が勃発し、作品のラストでは、廃止されるにいたる物語は、1970年代の時代性を反映している。
若者たちは、高校生以前に、立原道造とリルケなんか当たり前に読破しており、高校生にもなれば、思想のために立ち上がり、抗議行動をおこす、「ちから」を持っている。これまさに、1970年代の若者なのである。
一方、同作品がアニメ化された、1991年当時の若者たちは、どんな「ちから」を持っていたのだろうか。
俺が当時見聞きした例を出すと、大学の文学部に入学して、西洋思想史を習おうとしたところ、大学受験科目で、世界史を選択せず、日本史を選択していた学生たちは、授業の内容がさっぱり理解できない。なぜならば、「普仏戦争のさなか」と大学の先生に言われても、普仏戦争が、いつ、どこで、どういう経緯で起こった戦争なのかを、まったく知らずに大学生になっているからである。
西洋文学を習うと、大学の先生が「シラーとベートーベンによる交響曲第九の歌詞は、よく知られていますが」と前置きしても、シラーも知らへんし、第九も、聞いたことがない。だって、音楽の科目で習っていないからである。
時はバブル経済の真っただ中。1990年代の若者たちは、1970年代のように、教養として学問を身につけることもせず、2010年代のように、解雇を恐れて生命を砕いて働くことも、知らずにいた。
そんな中で、出崎統監督は、この古めかしい原作マンガを、例の、魔の手によって、見事に、稀代のアニメ作品として完成させた。
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アニメ「おにいさまへ…」は、原作が持つ時代性を、うまいこと現代っぽく、アレンジするところは、する。しないで、原作の持ち味を生かすところは、生かす。
前述の、「立原道造とリルケ」は、「赤毛のアンと星の王子様」に、置きかえられた。こりゃ、仕方がなかんべと、納得した。
一の宮貴さんが修学している学問は、「カント」から、「経済学概論」に置きかえられた。これは納得できない。レベル、下がりすぎ。概論ってなんだ概論って。
サン・ジュスト様は、やたらと脱がされる。純白のブラジャーとパンティーをまとった、隠れ巨乳のサン・ジュスト様は、杉野昭夫作画監督ならではの色っぽさ。ただ、背中から見ると、ドクター・キリコに見える。
薫の君も、やたらと脱がされる。16歳の、花も恥じらう乙女のはずが、初恋の彼氏の前で、しかも屋外で、浴衣を脱ぎ捨て、全裸になるシーンでは「そこで全裸にならんでもエエがな!」と、俺をあきれさせ、いや、うならせた。
たいして長くない原作を、全39話の長さに、引き延ばすため、大幅に変更されたキャラクターは、宮様こと、一の宮蕗子さんである。
アニメの宮様は、マンガよりも、格段に怖くて、残酷で、そして一方で、人格形成の裏付けが深く作りこまれ、彼女がこういうコワイひとになったのには、こんな深いワケがあります、と細かく、イヤとゆーほど細かく描かれた。
声優・島本須美さんは天才奇才
アニメ「おにいさまへ…」について、なにを差し置いても、特筆しなければならない点は、サン・ジュスト様を演じた、島本須美さんの奇才ぶりである。
男装の麗人、サン・ジュスト様が、いったいどんな声を出すのか、それを、クラリスやナウシカの、島本須美さんが、どう演じるのか。俺が、このアニメを見る前に、いちばん着目していたポイントはここだった。
そして、俺の期待は、熱狂と歓喜によって歓待された。島本須美さんの凄さには、脱帽した。感服した。しょくぱんまんもすごいと思った。ナウシカが、男の子の役も上手いんだーと思ってた。しかしサン・ジュスト様役は、精霊と呼べばいいのか、霊感と呼べばいいのか、とにかく震撼させられた。
まあアレだ。ごたくはこのへんで、やめとこう。
アニメ「おにいさまへ…」を、見れ。
改めて、心より、ご尊敬いたします。